お礼状とともに届く、言葉以上のもの
訪問看護の利用が終わったあと、ご本人やご家族からお礼状をいただくことがあります。
いただくお礼状のほとんどは、手書きです。
電話やメールで簡単に気持ちを伝えられる時代に、便箋やはがきを用意し、ペンを取り、一文字ずつ書いてくださる。
書き終えた手紙を封筒に入れ、宛名を書き、切手を貼って、郵便として送り出す。
その一つひとつの手間を考えると、手紙に書かれた言葉だけではなく、「どうしても伝えておきたかった」という思いそのものを受け取っているように感じます。
字が整っているかどうかではありません。
書き直した跡があったり、文章が途中で揺れていたり、便箋いっぱいに言葉が続いていたりすることもあります。
その筆跡から、手紙を書かれたときのご家族の姿や、亡くなられた方を思い出しながら言葉を選ばれた時間まで、伝わってくるような気がします。
手紙には、
「家で過ごすことができてよかった」
「夜中に電話をしたとき、すぐに対応してもらえて安心した」
「本人の希望をかなえてもらった」
「家族にも声をかけてもらえたことがうれしかった」
といった言葉が記されています。
私たちは訪問の中で、体温や血圧を測り、点滴や医療処置を行い、薬を管理し、療養生活について一緒に考えます。
けれど、お礼状を読むと、ご本人やご家族の心に残っているのは、医療処置だけではないことに気づかされます。
看護師が訪問した時間。
電話の向こうで話を聞いたこと。
病状が変化したときに、一緒に戸惑い、考えたこと。
ご本人の思いと、ご家族の不安の間で、何ができるのかを探したこと。
そうした一つひとつが、ご自宅で暮らし続けるための支えになっていたのだと思います。
もちろん、すべてが思いどおりに進むわけではありません。
急な病状の変化に対応しなければならないこともあります。
ご本人の希望と、ご家族の気持ちが重ならないこともあります。
訪問が終わったあとに、「あれでよかったのだろうか」と、私たち自身が振り返ります。
だからこそ、お礼状は、単に感謝の言葉をいただいたというだけのものではありません。
ご本人やご家族にとって何が支えになったのか。
どの言葉が安心につながったのか。
そして、私たちにもっとできたことはなかったのか。
一通一通の手紙を読みながら、その方とご家族と過ごした時間を思い返します。
訪問看護は、利用が終了すれば、そこで一つの区切りを迎えます。
けれど、私たちが訪問した時間は、ご家族の記憶の中に残ります。
そして、時間をかけて書いてくださった手紙もまた、私たちの中に残り続けます。
手書きの文字には、書かれた言葉以上のものが乗っています。
時間や手間をかけてでも伝えようとしてくださった、そのお気持ちを大切に受け取りながら、これからの看護につないでいきたいと思います。
※掲載している写真は、個人が特定されないよう、氏名、住所、文章などを加工しています。

