人工呼吸器のマスク問題 ~皮膚と気持ちを守る看護~

在宅で人工呼吸器を使いながら、日々の暮らしを続けている方は決して少なくありません。

なかでもNPPV(非侵襲的陽圧換気)は、鼻や口にマスクを当てて空気を送り、呼吸を助ける人工呼吸器です。気管に管を入れず、ベルトで固定して使えるため、在宅でも用いられています。子どもから大人まで、さまざまな方が利用されています。

こうした療養を支える訪問看護師は、人工呼吸器が正しく動いているかを見るだけではありません。その方が機械に生活を振り回されず、安心して暮らしを続けられるよう、呼吸の様子、皮膚への負担、不安の変化を見ています。

NPPVは長く使うほど、鼻の付け根や頬に圧がかかります。顔が痩せている方、皮膚が乾燥している方、低栄養のある方では、赤みが褥瘡(じょくそう※皮膚の深い傷)につながることがあります。

訪問看護では、マスクを外した時に赤みや傷がないかを確認します。圧がかかりやすい場所には保護テープや保護材を使い、乾燥が強い場合には保湿剤や、必要に応じて処方されたヘパリン類似物質製剤などを用います。マスクの位置やベルトの締め具合も、その都度整えます。

ただし、これは皮膚だけの問題ではありません。COPDなどで息苦しさの強い方にとって、マスクから空気が漏れる感覚は大きな不安になります。以前、「お金が手から落ちていくようで怖い」と話された方もいました。

漏れをなくそうとベルトを締めれば、皮膚を痛めてしまう。反対に、痛みがあってもマスクを外せなければ、呼吸への不安はさらに強くなります。

呼吸の苦しさと不安は、お互いを強め合います。だからこそ看護師は、皮膚を守るだけでなく、機器の表示や呼吸の様子を確認しながら、漏れの程度と呼吸が保てているかを一緒に確かめます。必要があれば主治医とも相談し、呼吸の状態と不安の両方を調整していきます。

NPPVを家で続けることは、機械に身体を合わせることではありません。機械と身体と気持ちの間にある小さな違和感を早めに見つけ、暮らしを続けられる形に整えていくことが、在宅での看護には大切だと感じています。

参考:日本呼吸器学会「非がん性呼吸器疾患緩和ケア指針2021」